Big Muff Pi 研究隊が行く!
レポート2:U.S.A.NYC製 第3期タイプ解剖編 Part.1

お待たせ致しました、って感じ?
歴代マフのなかで最も認知度が高いとされているモデル。
おそらくマフといえばこの顔を思い浮かべる方がほとんどでございましょう。
現行で発売されているUS版リイシューもコレをモデルにしていますしね。
例によってまたバンドメンバーから借りてきました。
この顔のモデルは、大体'70年代中頃〜'80年代まで作られたようです。
大まかにいって第1期がトライアングル・ノブ、第2期がラムズヘッドと
いわれていますので、このタイプは第3期に分類されます。
つっても、例によって大雑把なエレハモのことですから、
細かい点でいろいろ違いがあるようです。
基本的に回路構成自体は初期の頃から一緒で、
トランジスタ仕様で定数やパーツの違いがあるくらいなのだが、
見た目はこのタイプでも、第3期の後半に製造されたモデルは
回路にOPアンプというICを使ったものがあります。
大まかなサウンドの傾向はやはり紛れもなくマフだそうですが、
回路的には全く違います。
さらにエレハモの製品に"Little Big Muff Pi"というのがありますが、
それはこのBig MuffのSUSTAIN(歪みのゲイン)が固定され、
TONEがスイッチ切り替えになっただけで回路的にはほぼ同じだそう。
ご丁寧にLittleの方にもトランジスタ回路バージョンと
OPアンプ回路バージョンがあるそうな。
でもまったく違う回路のリトルもいるみたいだけどね。
ちなみに"Muff Fuzz"は全く違う回路で音も違います。
現行の"Double Muff"はそっち系統な模様。

っと、話が脱線しましたがとにかくこの2つはどちらもトランジスタ回路。
現行品との違いは、オリジナルは背面にTONE-BYPASSスイッチがあって、
TONE回路をバッサリとバイパスするスイッチがあるが、現行品は省略。
現行品は底面に電池BOXがあって簡単に電池交換できるようですが、
古いのはネジをハズしてパネルごとガパっと開けないといけないこと、
現行品はLEDがあるが古いのには無い、
フットスイッチが古いのは3Pですが、
現行品はリイシュー初期は6P、さらに現在発売されている
最新バージョンは9Pでトルゥー・バイパス仕様になっているようです。
回路面でも定数がだいぶ違う様子だ。そっちは後ほど調査する。



さて借りてきた2台ですが、これまた微妙に違う。
ご覧のようにノブが突起が出ているヤツと、まん丸のヤツがあります。
突起が出ている方は見た目がニワトリの頭みたいなので「チキン・ノブ」
丸い方は「丸ノブ」などと呼ばれているようです。
調査不足で断定は出来ないのですが、
第2期のラムズヘッドタイプにチキン・ノブがあるので、
丸よりチキンのほうが古いのかもしれない。
どちらもネジで固定されているのではないので、
引っ張ればスポっと抜くことが出来る。
持っている人は無くさないようにね。

チキンヘッドの方はかなり改造してあるようなので、
まずはオリジナルに近い丸ノブの方を解剖してみる。
ちと光沢ものはスキャナだとうまく質感が出ないんだけど、
見ての通りちと古いのでかなりキズがあるし、使用感はある。
しかしガリなどはないのでコレクションとしてではなく、
普通に使う分には全く問題ない。
つか、エフェクトは見て眺めてるより使ってナンボだと思うがね。
ケースは銀ベースの上部と、黒ベースの下部の2つだけ。
底面の黒い部分は、布貼りのような仕上げになっている。
パーツ類は全て上のパネル部に付けられている。

またもや光沢でスキャンしづらいんだけど、
とりあえずコレが背面入出力端子類。
左が入力、TONE-BYPASSスイッチ、
外部電源端子(3.5Φミニジャック)、一番右が出力。

中の様子。ペダルエフェクトとしては最大級にデカイくせに、
なかみはご覧の通りスカスカ(笑)
そのへんの無骨さもエレハモの魅力っちゃぁ魅力なんだが。
しかも線材しょぼっ!ハンダ付けも白人にありがちな
お世辞にも上手いとは言い難い感じだね。
パッと見たところ特別大きな改造の跡もないほぼオリジナルのようだ。
ジャックは意外にも日本製。この個体に限らず他のも
結構日本製ジャックは多いようなので
後から日本で取り替えられたのではなく、
安い日本製を輸入していたのかなぁ。
電池ホルダーも、発泡スチロール?みたいなヤツ。
う〜む、この2台を聞き比べてもほとんど一緒の音なので
基板上の部品そのものは品質的に安定しているようだけど、
筐体だけみれば強度とか信頼性はロシアンの方が断然上だね。
メカニカル的にはかなりショボい。これはちと意外だったなぁ。
パブリックイメージはアメリカ製の方が良さそうだものね。
ま、無骨なのがかえって男らしいとも言えるが(笑)
配線もこれじゃ簡単に線が取れたりしそうなものだけど、
その割にはすぐ壊れるとか言う話しは意外と聞かないので、
ま、結果オーライと言うことかしら。さすがエレハモ。
それに、いくら線材や作りがしょぼくても
これだけ多くのミュージシャンを虜にしてるんだからね。
最近の自作派に多い、宗教的なまでに高級・レアなパーツを使ったり、
ヴィンテージワイアーで芸術的配線をするよりも
個人的にはこっちの方が全然好きだわ。
フットスイッチは3P。トルゥー・バイパスなんて最近の流行りでしかないからね。

基板アップ。ボリュームは基板直付けタイプ。
US盤は多くがこのタイプのようだ。
このポットが筐体に固定されることによって
基板も固定されるというやりかた。よって基板にはネジ穴もない。
ご覧の通りパーツは全て方向が一緒になる様に並べてあり、
見た目的にはかなり美しい。サイズもコンパクトだ。
石は2N5088。他のエフェクトでも多く見かけるタイプ。
現行も5088が多いようだ。他にはMPSA18もよく見かける。
両者共にシリコンのNPN汎用品なので、音の差は無視できるレベルだろう
クリッピングダイオードはおそらく1N4148。コレも定番。
比較的音の抜けがよいといわれているが、その差は非常に微妙だ。
他には1N914も良くきくが、トランジスタ同様その差は無いに等しい。
カップリング系のコンデンサは1μの電解のようだ。
昔のトライアングルとかはセラミックの0.1μだったので、
ややマイルドな音になっていると思われる。
その電コンを含め、セラコン、マイラ、カーボン抵抗などは
現行品のパーツとほとんど同じ汎用品でレアだったり怪しいモノはない。
国産の現行汎用パーツとほとんど音もかわらないだろう。

基板PCB面アップ。スキャナからちと距離があってボケ気味な上
配線がごちゃごちゃしていてパターンはわかりづらいね。すまん。
素材はベーク板かな?年代を感じる。
"EH3034"の刻印。このあたりもいろいろバージョンがあるようだ。
線材のショボさもさることながら、ハンダ付けも白人らしい荒っぽさ。
あ、別に白人を差別してる訳じゃないっすけど。
ギブソンのハンダ付けなんかは超一流だからね。
一般的に見て日本の工場のパートのおばちゃんの方が綺麗。
ま、俺も相当汚いので人のことは言えないけど。
パターン自体は比較的コンパクトに仕上がっている。
とにかく基板のあちらこちらから配線が出ていてごちゃごちゃしてる。
ま、配線を出すところは基板の端っこにまとめた方が
見た目的には美しくなるのだが、
無理矢理パターンをのばすのもノイズが乗りかねないので
これはこれで良しとしても良いのかな?

とりあえず現時点で手元にある全てのマフを積み上げて
マフの壁を作ってみた(笑)壮観な光景だ。
さて、次はチキンノブの解析に着手することにする。
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